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HELLO.はじめに

 これまで教育の世界では、カリスマ教師、ベテラン先生による経験則が重視され、それらが蓄積されてきました。これは決して悪いことではなく、我が国の教育を大いに発展させてきた原動力になっていたのは疑いのない事実と言えるでしょう。

 

 しかし、21世紀に入る以前から子どもの発達が揺らぎはじめ、不登校、いじめ、非行といった問題が学校現場を混乱に陥れました。

 発達障がい、子ども虐待が、学校現場に大きな影響を与えています。子どもの自殺、体罰なども、毎日のようにニュースで取り上げられています。一方、少子化でありながら、受験戦争は未だに激しく、都会を中心に、小学校、いや、幼児期から塾通いが当たり前になってきています。

 

 こうした状況を打破するために、私たちは教育現場に「科学」を持ち込むことが良いと考えるに至りました。

DATA.データから考える

 文部科学省は、毎年、「児童生徒の問題行動等生徒指導上の諸問題に関する調査」を行っています。この中で、児童生徒の暴力行為、いじめ、不登校などの問題行動の調査結果を公表し、経年変化を捉えると共に、その問題の解析をしようと試みています。

 ざっとこの調査の概要をお伝えしますと、暴力行為、不登校については、この十年、微増微減を繰り返しています。両方とも中学生がピークですが、高校生になると減少します。いじめについては、社会問題化した2012年には、前年度に比べて3倍になっていますが、これはこの調査の限界(教師によるいじめ認知件数であり、実数とは言えない)を現すことになってしまっています。

 

 また、特別支援教育に関しては、2012年に文部科学省が行った「通常の学級に在籍する発達障害の可能性のある特別な教育的支援を必要とする児童生徒に関する調査」のデータは、大きな注目を集めました。同様の調査を行った2002年が、通常学級に在籍する、学習面及び行動面で著しい困難を示す児童生徒の割合」が6.3%であったのに対し、2012年で6.5%であったということです。

 微増という状況ですが、同じく文部科学省が毎年行っている学校基本調査によると、その10年で特別支援学校(知的)の在籍者数が約2倍、特別支援学級(情緒)の在籍者数が3倍になっているところから見ると、我が国において、特別な支援が必要な児童生徒が、この少子化の中、増加しているという実情が見えてきます。 

APPROACH.現在の対策

 このような深刻な状況に対して、様々なアプローチがなされています。

 

 例えば、国立教育政策研究所の生徒指導・進路指導研究センターは、様々な提案をしています。

 不登校については、不登校の児童生徒への支援と同時に、予防的支援や初期対応が重要であることを述べ、いじめに関しても、10年以上の追跡調査を用いて、データに基づく支援の必要性を一貫して主張しています。

 

 同様に、独立行政法人、特別支援教育総合研究所では、インクルーシブ教育導入を前に、合理的配慮のデータベースを作成、公開やデジタル教科書の開発など、様々な取り組みがなされています。

 その他にも、同じような取り組みが、様々な学会、研究会、大学の研究室、教育委員会、教育センターで行われており、それらを現場に伝えるべく、多くの研修会、セミナーが開かれています。

 

 制度の面での対策も進んできました。子どもたちのこころの問題に対応するために、スクールカウンセラーの配置が進み、近年は、スクールソーシャルワーカーの配置が始まりました。2007年から特別支援教育が学校教育に位置づけられ、どの学校でも特別支援教育がなされるようになってきました。文部科学省の調査によると、7割の教師が特別支援教育の研修を受講し、約9割の学校で、特別支援教育の校内委員会が設置されています。

 また、学校現場では、どこでも研修にたくさんの時間を割いています。ほとんどの先生は、仕事に熱心で、休む暇なく働いています。また、こうした研究成果は、研究紀要としてまとめられ、研究会の場で発表されています。

 

 このように様々なアプローチがなされているのですが、それが実際に、子どもの問題(不登校、いじめ、問題行動等)の減少に効果があったとの評価をするに至っていません。

 なぜなのでしょうか?

 

SCIENCE.科学の導入

 教育現場に現れている問題に対して、私たちは様々なアプローチを行っています。しかし、現状を詳細に検討していくと、そうした対策が効果があったかどうかすら、実はわかっていない状況にあることがわかってきます。これは対策の結果が科学的に計測されていないことを意味しています。(詳しくは講座で御説明しています)

 

 特に、データの取り方や解析の仕方について、まだまだ検討の余地があるのですが、これは教育現場が非常に複雑で、科学的研究を行う土壌が整っていないことと関連があるようです。また、子どもの行動が困難であればあるほど、教師など支援者個人の感情や感覚に支配され、客観的事実を見いだしにくくなることも少なくありません。

 つまりたくさんの取り組みがなされていても、

① データが取得されていなかったり、取得方法に問題があったりしているため、何がどう効果があったのか、わからない、もしくはわかりにくい状況にある、

② そのため、様々の対策の評価が定まらず、現状に合わせて改善することが難しい、

③ そもそも現状についての把握が十分でないかもしれない、

 ことになっている可能性があります。

 

 一方、欧米では、子どもの発達について、大規模なデータを長期間追跡して取得し、そのデータを多くの研究者が解析していくという研究が行われています。こうした取り組みの全てが素晴らしいわけではありません。しかし、子どもの問題一つ一つと、子どもの背景、教育方法との因果関係が明らかになっていくインパクトは大きく、こうした研究が進むに従って、科学的根拠に基づいた教育、すなわちEvidence Based Educationの重要性が高まっていると言えるでしょう。

 

 私たちは、こうした欧米の研究動向を考えた上で、我が国の困難な状況の処方箋として「科学」を導入すべきだとの結論に達しました。

 

 御承知の通り、教育は、「子どもの発達」という複雑な現象を、集団で扱うという特性から、「科学的研究」が困難な分野です。まして、人間同士の営みですから、心情的、情緒的なことを無視することが難しく、それが「科学」の導入を阻んできたという歴史があります。

 

 しかし、コンピュータの進歩は著しく、ビッグデータを扱うことが可能になりました。そして発達障がいを脳の機能から捉える時代になりました。こうした現在の状況を考えると、今こそ、教育現場に科学を持ち込むべきではないでしょうか。

 それも、教育現場の外、すなわち国や民間、大学の研究機関が行うのではなく、教育現場にいる教師自身が「科学」を扱う主体になり、これまで教育現場に積み上がってきた先人の英知や経験の素晴らしさと矛盾させることなく、何よりも子どもたちのために、新たな方略を見いだすことが必要なのです。

 

 よってこのプロジェクト「教育に科学を!」の中心は、子どもであり、その子どもと一緒にいる現場の教師、支援者の皆さん、さらには保護者をはじめとする全ての子どもに寄り添う人たちが主人公になるべきだと考えています。

 何よりも全ての子どもたちの健全な発達のために、教育現場に科学を持ち込み、実効性の高い新たな取り組みができるようにしていこうではありませんか。

ABOUT.私たちの立場、優位性

 このプロジェクト、及び、このホームページを管理運営しているのは、公益社団法人、子どもの発達科学研究所です。

 

 私たちの研究所は、最先端の研究成果を教育、子育て等の現場に活用することを大きなミッションとして設立され、子どものこころの発達研究センター(大阪大学大学院、大阪大学・金沢大学・浜松医科大学・千葉大学・福井大学、連合小児発達学研究科)と連携しています。(詳しくは、子どもの発達科学研究所、ホームページを御覧ください)

 

 よって、私たちのバックグラウンドは、教育や発達心理だけでなく、精神医学、分子生物学、脳画像学、疫学統計学と幅広く、そうした他分野を融合していくことがこの複雑な問題へのアプローチとしてユニークかつ大切であろうと考えています。

 

 特にこのプロジェクトでは、これまで人間同士の複雑な営みであるが故に、科学の導入が難しかった教育現場にアプローチすることから、疫学統計学を中心にした研究デザインに関する知見を活かすことができると考えています。 

 

 さらに、このプロジェクトの中心になる研究員には、学校の教師経験があります。

 彼らは、学校現場の困難性と、閉塞感を知ると共に、最新の知見、科学的研究の方法を理解しています。彼らが中心になることで、これまで研究者から押しつけられたいた「科学」が、現場の教師が使いたくなる、もしくは使うことができる「科学」になると言えるでしょう。